2011年 07月 10日
出会ってしまった、運命の… |
運命の人に出会うと、自分の意思を超えて事がトントンと驚くほど速く運ぶとよく言われます。そんなの大袈裟な…とずっと思っていましたが、本当のことなのだとこの1週間で身を以って体験しました。残念ながら相手は人間ではなく、ヴァイオリンの弓ですが…。
私の楽器を作ってくれた楽器職人のSさんは、最近弓にはまっていてフランスとドイツでこの数カ月のうちに数百本もの弓を見て歩いたのだそうです。彼は楽器を作る専門で、弓は作らない上に、あまり興味もなかったそうですが、いくら良い楽器を作っても奏者の弓の品質が悪かったり、相性が悪かったりで自分の楽器の良さが活きていないと、苦く思う事が多々あるらしく、そこから弓と楽器の相性について深く考え始めたようです。
ちょうどひと月前に、楽器の調整を頼みに彼のアトリエに行くと、売り物にはならない程素晴らしい弓を借りてきていた所でした。あまりに高貴な姿のその弓で弾かせてもらうと、自分の楽器がグレードアップされたように、全く違う音になるのが不思議でした。勿論その弓は私にとっては全く手の届かない雲の上の存在。しかしそれがきっかけで漠然と弓が欲しいなと思い始め、彼にも適当なものを見つけたら連絡をくれるように頼みました。しかし弓と言うのは、本当に探すのが難しく、今までも帯に短し、たすきに長しと言う感じで、なかなかこれという物に出会いませんでした。特に弓は消耗品な上に、傷をつけてしまうと表面積が小さいために致命的となり、全く価値のないものになってしまう場合が多いのです。弾いている間に折れてしまったという話もよく聞きます。なので状態の良いものはかなり少なく、良い物やお買い得なものには皆が殺到するのです。
さて、今回の私の運命の出会いは火曜日の朝。指板削りの為にアトリエを訪れると、興奮した彼の姿が…。「ちょうど前の日にドイツから帰ったばかりで弓を見つけてきた。まだ誰にも言っていないから君が最初だよ」との言葉にも私自身はあまりピンと来ず、言われるがままに寝ぼけながらその弓で弾いてみると…。調弦の為にAの音を弾いた途端に恋してしまいました。
なんとも洗練されたスリムな音、それでいて深くパワーもあり。次の瞬間には、「これって買えますか?」と口が動いていました。とは言え、洋服やバッグを買うのとはわけ違うので、言ってしまったことを後悔していたら、彼が「持ち主に聞かないとわからない」と。このまま破談になればまあ良いか…と家に帰るとすぐに彼からの電話で「持ち主は売るって言っているから、君はこの弓のオーナーだよ!」と…。あまりの展開に唖然とすると同時に嬉しさがこみあげました。
何の苦労もなく、探し始めて初めての弓で決まってしまうとは。彼も私の為に探してきたわけではまるでなく、自分の為に色々な弓を探して持ち帰り、そこに最初に来たのが私だったというだけのことなのですが、お互いに「これは運命だね…。」と。
運命の君が我が家に来てからは興奮し、悪い寝つきがさらに悪くなっています。
私の楽器を作ってくれた楽器職人のSさんは、最近弓にはまっていてフランスとドイツでこの数カ月のうちに数百本もの弓を見て歩いたのだそうです。彼は楽器を作る専門で、弓は作らない上に、あまり興味もなかったそうですが、いくら良い楽器を作っても奏者の弓の品質が悪かったり、相性が悪かったりで自分の楽器の良さが活きていないと、苦く思う事が多々あるらしく、そこから弓と楽器の相性について深く考え始めたようです。
ちょうどひと月前に、楽器の調整を頼みに彼のアトリエに行くと、売り物にはならない程素晴らしい弓を借りてきていた所でした。あまりに高貴な姿のその弓で弾かせてもらうと、自分の楽器がグレードアップされたように、全く違う音になるのが不思議でした。勿論その弓は私にとっては全く手の届かない雲の上の存在。しかしそれがきっかけで漠然と弓が欲しいなと思い始め、彼にも適当なものを見つけたら連絡をくれるように頼みました。しかし弓と言うのは、本当に探すのが難しく、今までも帯に短し、たすきに長しと言う感じで、なかなかこれという物に出会いませんでした。特に弓は消耗品な上に、傷をつけてしまうと表面積が小さいために致命的となり、全く価値のないものになってしまう場合が多いのです。弾いている間に折れてしまったという話もよく聞きます。なので状態の良いものはかなり少なく、良い物やお買い得なものには皆が殺到するのです。
さて、今回の私の運命の出会いは火曜日の朝。指板削りの為にアトリエを訪れると、興奮した彼の姿が…。「ちょうど前の日にドイツから帰ったばかりで弓を見つけてきた。まだ誰にも言っていないから君が最初だよ」との言葉にも私自身はあまりピンと来ず、言われるがままに寝ぼけながらその弓で弾いてみると…。調弦の為にAの音を弾いた途端に恋してしまいました。
なんとも洗練されたスリムな音、それでいて深くパワーもあり。次の瞬間には、「これって買えますか?」と口が動いていました。とは言え、洋服やバッグを買うのとはわけ違うので、言ってしまったことを後悔していたら、彼が「持ち主に聞かないとわからない」と。このまま破談になればまあ良いか…と家に帰るとすぐに彼からの電話で「持ち主は売るって言っているから、君はこの弓のオーナーだよ!」と…。あまりの展開に唖然とすると同時に嬉しさがこみあげました。
何の苦労もなく、探し始めて初めての弓で決まってしまうとは。彼も私の為に探してきたわけではまるでなく、自分の為に色々な弓を探して持ち帰り、そこに最初に来たのが私だったというだけのことなのですが、お互いに「これは運命だね…。」と。
運命の君が我が家に来てからは興奮し、悪い寝つきがさらに悪くなっています。
by lisa_oshima
| 2011-07-10 07:34
| エトセトラ